このサイトを立ち上げた理由を話したい。
これまで、海外でも日本でも、いろんな景色を見て、いろんな人と出会い、数えきれないほどの瞬間を経験してきた。
時に深く語り合い、時にすれ違うだけの関わりもあった。そこには、人だけでなく、景色や物や一瞬の出来事も含まれている。
その一つ一つが自分にとって大切なかけらであり、消えてしまわないように記録しておきたいと思った。
その思いが輪郭を持ち始めたのは、スペインを目指してポルトガルを歩いていたときだ。
気づけば 300キロ以上の道を、ひとりで歩いていた。延々と続く道の上で、一生分の独り言を口にした。人に話すのではなく、ただ自分と話す。そのうちに、自分と友達になっていた。
その体験が教えてくれたのは、出来事をただ集めるだけでは点のままだということだ。
けれど、自分という軸を通して並べれば、散らばった点は線となり、物語を描き始める。
それは、星空の点が、人の目によって星座の形に見えるようなものだった。
郷愁の道

歩いた日々のあと、僕はカナダで過ごしていた。
静かな時間の中で出会った数式がある。
オイラーの公式だ。

数学を超えて美しいと語られるこの一行に触れたとき、胸の奥が震えた。
全く異なる性質を持つ5つの記号が、ひとつに調和している。
まるで、これまで自分が見てきた景色や人や物、そして内面の声までもが、あとから不思議な線でつながっていく感覚に重なった。
ただ、不思議なことがある。
インスピレーションを得たときはいつも出所をメモしているのに、オイラーの公式だけはどこで知ったのか思い出せない。
「オイラーの公式がある」とだけ書き残していて、最初の出会いが抜け落ちている。
まるで、この公式は前から自分の中に存在していて、いつか必ず目の前に現れるのを待っていたかのようだった。
港に立つ楓

ポルトガルの道で自分と友達になれたこと。
カナダで数式に出会って驚いたこと。
その二つが結びついて、このサイトの原点になった。
人、場所、物、体験、心の動き。
一つ一つは散らばっていても、ここに記録すればやがて美しい調和を描くはずだ。
この「e=energy」の最初の記事は、その始まりを刻んでおきたい。
一歩ずつ歩いて、自分を知り、数式に触れて驚き、そのすべてがここへ導いた。
これが、Euler(オイラー)の始まりの物語。